「おれから離れてくれないか?」 「嫌よ」 「頼んでも無駄なんだな」 「わかってるわね」 そう言いながら倉吉は一瞬だけ視線を横に走らせ、白い歯を見せると、視線を元に戻す。 その仕種の意味は数十秒後にわかることになる。 今度は目を見開いたまま倉吉が顔を下ろす。 おれが顔を左へ背けると倉吉の唇が追いかけてきた。 さらに首を右に急回転させても効果は乏しい。