おれの席から斜め後ろに座っていた蜜姫零という女子を見た瞬間、心臓がドクンと過剰な脈を打つ。


 スラリとした体系と真っ黒で長いストレートの髪、細い目、ナチュラルなアーチ型の眉、高い鼻柱、ほどよく厚みのある唇は男なら誰もがキスする場面を連想し、理想的な容姿を独り占めしたかのような顔立ちに思わず息を飲むだろう。


 目が合い、彼女はニコッと笑った。


 おれに微笑んだのか?


 今度はドキドキッと早いリズムで心臓が二度高鳴る。


 妙なことに気づいた。


 蜜姫零という名前に興味を示した者はおれしかいないのだ。