担任の先生が教室に入ってきて簡単な自己紹介を済ませると、出席簿を読み上げていく。
掠れた声や他人のところで間違って手を上げないことを肝に銘じながら、名前を言われるのを待つ。
「田中正樹」
「はい」
高校生活、最初のひと仕事が無事終わり、おれはほっとする。
順調に名前が読み上げられていく中、「み……」と言ったあと、担任の先生が出席簿に顔を近づけ、改めて言い直す。
「蜜姫零(みつひめれい)」
「はい」
まるでアニメの登場人物のような名前だなと、「はい」と返事する方へ何気なく視線を向けた。
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