溺れているゼロ。 助けないおれ。 ゼロと目が合い、口の動きが“助け……て……た、田中……く……ん”に見えた。 それでもおれは動かない。 チャポン……と力なくゼロの右腕が海面を弾き、静かな海へと戻る。 砂浜にガクッと膝が落ちる。 なんでおれはゼロを助けに行かなかったのだろう? 焼けるように暑い砂を掴んでも感覚が伝わってこない。 罪悪感だけが胸を焦がす。