「みつき!満月って書いてみつきかぁ・・・可愛いね」
「小雪さんは?まんま小雪ですか?」
「違う、私はシホ。志に保険の保で志保」
「へぇ~」と言いつつ、少し嬉しさに浸る私が居た。
店で働く人に本名を教えたのなんて初めてだから。

「明日からまた学校行って店行って働かなきゃだな」
ため息をつく小雪さん。
「真希ちゃんは自分からキャバクラ入ったんでしょ?珍しいよね」
煙草に火をつける。
うちに灰皿なんかないのに。
「元々はKに居たんでしょ?」
『K』。
思いもしないことを言われて驚く私。
「なんで知ってるんですか?」
そう聞くと、小雪さんは笑った。
「Kのナンバーワンが来るって店長が言ってたもん」

あのお喋り。
何でも言っちゃうんだよなぁ、あの店長。
Kというのは、Dearestに働き始める前に働いていた店の名前だ。
歌舞伎町にあった有名店で、入店して1ヶ月で私がナンバーワンになった店。
順位の移動が激しくて、私はそこで2ヶ月ナンバーワンを守った。
まぁ、競争が激しくてすぐに辞めちゃったんだけど。
結構なことも色々言われたし。高校にバレてもいけないから。
そこで由梨と知り合ったんだっけ。