・・・リクSide・・・

「どういうことなの!傷できてるじゃない!」

傷というのは、俺の傷ではなく、モトジマについていた頭の傷のことだ。

目の前にいる女教師を見てみた。目を充血させ、頭から角を生やしたように起こっている。どこまで過保護なんだ、と言ってやりたくなった。

周りの目を気にしたのか、充血した目を俺に向け「ちょっと来なさい」と低い声で俺を相談室に連れ込む。
きっと説教開始だな、と俺は予想した。

相談室のドアを閉めると、教師はさっきよりも増して充血した目で俺を見る。

「ったく、傷モノになったらどうすんのよ。今は見えてないからいいとして」
「・・・不注意でした」
「思っていたより使えないのね。こっちは〔あんたみたいな〕ガキを雇ってやってるのよ?消えたって誰一人困らないんだからね?分かってんの?」
「・・・そうですね」

あんたみたいなの、とはどういうものなのか聞いてやりたくなる。グッと唇を噛んで、怒気を押さえた。しかし、その言葉の意味を理解すればするほど、呼吸のリズムが乱れ、手に汗を握る。

俺の素っ気ない態度が気に入らなかったのか、教師はいきなり置いてあった手に乗るくらいの石の置物を握り、それで俺のこめかみを殴った。
手の動きは見えたが、さらに怒らせかねないので、とり合えず殴られておく。

流れ出た血液が目の端に入っても、俺は鼻息を吐き、言う。

「次は無いと思ってますよ」

教師はギロリと俺を見てから「化け物が」と小さく呟いてから相談室のドアノブに手をかけて言う。

「放課後まで外で立ってなさい」

それを言うなら廊下に立ってなさいでは無いだろうか。

俺はそう思いながら「はい」と面倒臭い気持ちがばれないように言う。