トリップ


「悪いな。仕事見られたら殺す。それが『ルール』なんだよ。」
「ルールでもカレールーでもいいっての!殺すなら早く・・・あ、ちょっと待った。」

そう言いながら、さっき店で買ったエロ本と漫画、自作小説の一つや同人誌(BL描写が主に含まれる漫画や本。)を取り出した。
実はキャプテンはエロい物の好きのオタク・・・以前の学校でが『エロ腐女子』と呼ばれていた。
その事に関して、彼女も何とも思わないのだが。

「この本たちをうちの死体の側に置いてってくれ。」
「はぁ?」
あまりの意外な言葉に、ケイラはパックリと口を開いた。

「何でだよ。」
「やってさ、こんな汚い路地で死ぬくらいなら、どうせなら死ぬ時に好きな物と死ねるってのは・・・理想やね?」
そう言うと、キャプテンはあぐらで座った。

「ほい。一瞬で殺してまってな。」
「殺されるんだぜ?何でそんな余裕こいてんだよ。馴れ馴れしいし。」
「どうせ死ぬんやから、被害者のお話ぐらい聞いてくれてもいいやろ?うちがケイラより弱いってことは、さっきの事で分析済みやろうし。」
「名前で呼ぶんじゃねぇ。俺とてめぇは友達か」
「じゃああと少しで死ぬ友達ってことでいいやんか?」
(ああ言えばこう言う・・・)

死ぬ前に「助けてくれ」とか「ごめんなさい」と喚く奴はいくらでもいたが、キャプテンのような者は初めてだった。
・・・そう思うと、殺してしまうのがもったいなかった。