すると突然、木の人形のようにぐるりとこちらをむいた。

「君は・・・何であの時・・・あんな事言えたんだ。」
「へ?」
「俺が鬱陶しく付いてきた時『傷ついて欲しくない』って言った。何で・・・何であんなこと言えたんだ。相手は守り屋といっても・・・人殺しも同然だってことが・・・分かってるのに。」

リクがどんどん近くなってくる。
いつもよりも必死な顔つきになっている。
何が彼をそんなに真剣にさせたのか、エリカには分からなかった。
一瞬ではあったが、微かに心臓が跳ねた。恋愛シーンでよくあることだが、それとはまた違う、何かに反応するような、そんな動きだ。
この感情は何なのだと、エリカは自分自身に問いかける。
彼の中に眠る「何か」を、無意識に感じ取って察してしまったのだろうか。小学生の頃にも一度感じた鼓動。

つい自分が真剣になっている事に気づいたのか、リクはすこしエリカから離れる。

「い・・・今の言葉、聞かなかったことにしてくれ。」
「ああ、いいですけど・・・なんで・・・」
「言わないでくれ。」

エリカの言葉を遮るように、リクが耳をふさいだ。

「もう良くなっただろ。道案内するから、早く帰れ。」