トリップ


「タク、注射器と解毒剤・・・持ってきてくれ。」
「はーい。」

髪の短い少年に頼むと、少年は元気に薬を取りに行った。
少年に薬を持ってきてもらうと、リクは注射器の中に薬を入れ、エリカの変色している左腕に注射した。
エリカがすこし眉をひそめる。
それもそのはず。この解毒は激痛を伴う。一般人にはきつい薬なのだ。

薬を入れ終わると、リクはふとあることに気づいた。
熱湯とタオルを忘れた。
といっても、ここでエリカから目を離すわけにもいかない。

「リクさん、帰ってたんですか?」

ひちさんのようなオカッパのような少年・・・いや、ジュマがいいタイミングに入ってきた。

「ジュマか、丁度いい。」
「?」
「悪いが、熱湯とタオル持ってきてもらえるか?解毒中なんだ。」
「ああはい、紅涙校の生徒さんですね。」
「・・・ああ。」

返事を聞くと、ジュマは急いで子供用なバケツに湯を注ぎ、タオルをつけて持ってきた。
湯で浸したタオルで傷口をゆっくりふき取った。

「珍しいですね。リクさんが依頼人の傷を許しちゃうなんて。」
「・・・わけあってな。」

傷ついてほしく無い。エリカの言った言葉が脳裏を過ぎった。