トリップ


「な・・・何やッ!?」

急いで声のするほうに行ってみると、そこには三人ほどの男の死体があった。

「げ・・・何やこれ・・・・」

グロテスクなものには慣れていた(といっても、ゲームや映画などで、だ)ものの、本物にはさすがに驚いた。
すると、声がした。後悔や罪悪感に満ち満ちた「・・・馬鹿・・・」と言う独り言だ。数秒して、その向こうから荒々しい声がする。嫌な予感、と呟きたくなった。

「何だよ、見ちまったのか。」

そう言いながら近寄ってきた少年は、髪は肩より下まで伸びた茶髪で、背は168ぐらいか、キャプテンとあまり変わらない。痩せていて鋭い目は、淡く青い瞳をしていた。
たぶんハーフなのだろう。

キャプテンは驚いて口をパクパクさせた。その驚きの理由は顔だ。なんと、似顔絵の紙に書いてあった「ケイラ」に酷似しているのだ。

「ケイラ・・・っぽい」

思わず口に出してしまった。
それを聞くなり、少年は素早く動き、なんとサバイバルナイフをキャプテンの首に押し当てた。
痛みは感じなかったが、ナイフが皮を薄く切って、うっすらと血が首を伝うのが分かる。

「お前、何で名前知ってんだよ。」

やはり本人なのかと、こんな場でもキャプテンは溜め息をつく。

本物か・・・じゃあ、本当にトリップしてまった・・・のか?)

そう思ったりするが、何よりも最優先すべきことを、ナイフに少し力が抜けた時に思い出した。

「さてと・・・逃ぃぃげろぉぉ!!!」

無理にケイラを押しのけ、キャプテンは死に物狂いで走った。