「ここで何を・・・」
「いや、秋乃に、ジュマを探して来いと・・・言われただけだ」

目など合わせられない。

恥ずかしくて合わせられなかった。
エリカも気まずい様子で、ちらちらとリクを覗っている。

リクは、自分がこんなにも、感情をコントロール出来なくなったのは初めてだと思った。
好きではないと思えば、いつもなら簡単にそう納得できるはずだというのに、だ。

「君は、ジュマを見ていないか?」
「あ・・・あの、うちが行く所にいますよ。いろんな人がおって。あの子自身、楽しんどったし・・・」
「・・・そうか。じゃあ、秋乃にはそう伝えておくか」

本当は秋乃に伝える件は、今の事と比べれば、どうでも良かったのに。そっちを優先するかのようにエリカから背を向けてリクは歩き出した。

彼女が遠ざかっていく足音が聞こえる。
リクの中で「本当にいいのか?」と問うてくる声が聞こえた。「今だぞ。話せるのは」

いまだから、どうしろと言うんだ。

ひたすら歩き続けろ。自分でそう命令したはずなのに、体はいつの間にか走り出していた。

「待ってくれ」とリクがエリカの手を握ったのは、彼女が自分の体が透けていることに気付いてからだ。