ジュマは優しく語りかけるように、そしてそっと苦笑いした。

「そういうものか」
「そういうものですよ」

あなたも、とジュマはリクを見つめた。澄んだ、茶色を帯びた瞳だ。

「あの後輩さんがいなくなったら、悲しいと言うか、つまらないでしょう?」
「好意と、友達とは違う」
「悲しくないんですか?」
「いや・・・。それは、考えたくないな」

困ったように言うリクに、ジュマは勝ち誇ったように、それであって、小さな子供を見守るような顔になって言う。

「あなたがそう思える人で、嬉しいです」
「何故だ」
「人を想える奴は、絶対極悪人なわけじゃない。同じ部活の女の子の受け売りですよ」
「相当いい人間なんだな」
「まぁ、彼女曰く「友達の受け売り」らしいですけど」
「なんだそれは」

リクは、ジュマの前で珍しく苦笑する。そして、珍しく2人の言葉が重なった。

「会いたい」

――

ケイラは磨かれた光を放つナイフをジッと見つめた。

(この仕事――やめようかな)

決心と考案の境目にある考えだった。佐野達には悪い気がしたが、それでも、自分をいい方向に直したかった。
罪は消えない。だが、自分をさらに黒く染めたくも無い。

何より、自分が大切に思う人間がいるにもかかわらず、これ以上手を汚したくなかったのだ。

「俺・・・何で今こんなこと考えてるんだろ・・・」

以前はやめる気など、さらさら無かったというのに――。