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「お前、全然危機感ってものがねぇな」
「何で」
佐野の事務所に向かう途中、俺はそう聞いた。佐野はキョトンとして俺を見ている。
「万が一、俺が普通の高校生だったらどうすんだよ。職業教えたら通報された、って展開になっててもおかしくない」
「バカだな、それくらい俺だって考えてる。なにせ」
佐野は懐に手を伸ばすと、いきなり拳銃を俺に向けてきた。
「これは俺にとっちゃ、重大機密職なんでね」
今にも引き金に触れそうな位置に指を置き、佐野は言う。
「お前が何か変に動いたらさ、その脳みそブチ抜くつもりだったから」
こいつはおそらく本気だった。
それは目の前に銃を突き出されて分かった事だ。
「まぁでも、お前が〔こっち〕の人間でよかった。俺は実行犯じゃねぇから、やりづらいんだ」
「良かったのか、それ」
「ああ。大いに良かった」
ホッとしたように佐野は言う。わざとらしい大袈裟さもあったが、どこか素直さも感じ取れる。
「俺の同僚に坂見って女がいるんだけど、あんまり別嬪じゃないんだ。そこは勘弁してくれな」
「女には、興味無いから」
「そかそか、そりゃ良かった。坂見が嫌になって出て行くのかと思った」
佐野は少しだけ困ったように笑う。


