トリップ


「・・・いねぇよ」
「は?」
「いねぇんだよ。俺が殺したからな」
「馬鹿じゃねぇの?雇い主殺して自分に何の利益がある?」
「俺だって裏切られなきゃこんな事しなかったっつうの」
「・・・裏切られた?」

男が首を傾げたので、俺は理由を説明した。話を聞き終わると、男は納得したらしく「ああ、なるほどねぇ」と顎に手を当てた。

「そりゃあ分かるぜ。まだほんの中学生に小さなガキを殺せってのが無理な話だ」
「いつまでも中学生呼ばわりしてんじゃねぇぞ」
「いや、だって・・・身長が・・・」

くくくく、と笑いを堪えている様子が余計に腹立たしい。

「そかそか、お前はじゃあ雇う奴が誰もいないってことか」

うんうん、そうだよな、と勝手に1人でうなづき、男は「決めた」と右手の手の平の上に左の握り拳をポン、と置いた。

「じゃ、俺が雇ってやる」
「え?」
「俺も人材不足なんだよ。丁度いいじゃねぇか。仲良くしようぜ」

男が「俺のことは佐野って呼べよ」と言い、俺に手を差し伸べた。