トリップ


男子は作り笑顔で「そっ、そうだね。ゴメン」と軽々しく言うと、さっさと運動場の方に遊びに行ってしまった。

助けられた事に、1つずつ、温かみのある染みが広がっていく。気付いた頃には、ツトムは転校生からノートをもぎ取り、誰もいない図書館へと走っていた。

図書館のドアを開け、1人もいない図書館の中でうずくまる。

何なんだ・・・あの子は。

温もりのような感覚が忘れられなかった。満たされるような感動だ。冬には熱気を、夏には冷気をそっと吹きかけられた感覚とも言える。

自分はとても喜んでいる。そう悟るのに時間はかからなかった。しばらノートを抱き締めていると、図書館にまた転校生の声が響いた。

「キリダさーん。ここにおるの?」

苗字で呼ばれ、ツトムは驚いて椅子を蹴ってしまった。もちろん、その音は静かな図書館に大きな音で響き渡る。

「あ、そこか」

かくれんぼで最後の1人を見つけたような表情を浮かべ、転校生はツトムに歩み寄る。

「皆運動場の方に行ってまったよ。行かんでいいの?」
「・・・いいて。関わらんといて」

転校生に対し、ツトムは冷たい言葉を投げかける。

「なんでー?一緒にいこ?あの子んたぁには、ちゃんと言っといたったで」
「・・・いらんって。うつるよ?」

「馬鹿がね」とツトムは皮肉を込めて、そう言い放つ。