「えっ!?」

エリカはカッと目を開く。自分の言った事を真似され、恥ずかしくなる。

「すまんかったな」
「何が・・・」
「黙ってて」
「そ、そんな、何を・・・」
「俺も、気まずくて言えなかったし、義務感があって、怖かったんだ」

困ったように眉毛を垂らすと、ぽんぽんと手をエリカの頭に乗せる。

「惹かれてたってことが」
「んっ・・・」

唾を飲み込んだ時に、たまたま出てしまった、息を詰まらせるような声。相手からそう言われて、こっちは何を言えばいいのか分からなくなる。

「何だか・・・すっきりした」
「あの・・・」
「あ、そうそう。俺が今言った事は忘れてくれ」
「そりゃ・・・ばれたらすごい困ると思うし」
「ああ。そう言いたかっただけなんだ。なにせ、初めてだから溜め込んでストレスになってたからな」
「それは・・・どっちもどっちですよ」

安心させようとしてくれたのか、リクはゆるく笑ってくれた。

「いつもどおり、普通にしてて・・・くれるか?」
「それだけなら・・・いいですよ。内面的にというか、怪我するくらい邪魔でなければ」

大丈夫、と言うとリクは手でウェーブがかった髪の毛をすいた。

「こっちは、それでいいからな」

土岐が言った言葉を、リクは不意に真似していた。



『僕がここにいて・・・土岐はいいの?』
『何でだよ、邪魔じゃないって』
『僕は・・・いらない子供なんだよ』
『いいから、いてくれよ』
『本当に?』
『こっちは、それでいいからな』