トリップ


しばらくして、リクが自分の苗字を呟く声が聞こえてきた。そして、どうして仕事のことを知っているのだと聞いてきた。

「通路に怖い人が載った書類見たからもしかしてって・・・」
「余計な事を・・・」

舌打ちをする音が聞こえてきた。
そんなに余計だっただろうか。先ほどの意志も脆く砕けそうになって黙りこくる。すると、向こうから「すまん」と謝る声がしてきた。

「落ちてたのか?その書類」
「・・・ごめんなさい。落ちてました」

少し沈んだ声で言うと、リクは「いや、いい」と落ち着いた声で言う。「そのまま集いの場まで?」

「はい。ジュマさんがおったもんで・・・それ渡して今に至ってるわけで・・・」

ジュマは目をキョロキョロとせわしなく動かす。さん付けで呼ばれたのは初めてらしい。

「ふっ・・・」

少し活気のある声で、リクが笑ったのが、全員、声で覗えた。

「アイツが・・・笑った・・・」

秋乃もポカンとしていた。それほど珍しかったようだ。最初にジュマが我に返り、また話しかける。
しばらくして何度かうなづくと、最後には「・・・はい!」と威勢の良い声を上げた。

「紅涙近くの立体駐車場、その屋上の下って言ってました」
「でかした。すぐ行くよ」
「あ、待ってください」

走ろうとする秋乃を呼び止め、ジュマは秋乃の耳元でヒソヒソと話す。