トリップ


これ以上秋乃の説教を聞いていてはラチがあかないと思ったのか、ついにジュマが割り込んだ。

「今いる所、教えてください」

助けに行きますから、とジュマが言うが、電話越しでは何を話しているのか聞こえない。

「頼みます!秋乃さんぐらいしか力になれないと思いますけど・・・」

自分も何か言うべきだろうか。エリカは2人の話を聞きながらそう思う。自分とは世界が違う、首を突っ込んだ所で何になる、そんな声が聞こえているように思えた。

『そりゃあそうやろうね』

懐かしい声が響いた。初めて彼女と喋った時の言葉だ。

『そっちが首を突っ込んだ所で、周りも変わらん。うちも・・・何にも変わらん』

幻覚だろうか、ぼさぼさの前髪の間から瞳が見えたようにも見えた。

『うちは相変わらず根暗で、人一人助けれんまま・・・』

違う。彼女はちゃんと変われたではないか。

『可愛くて小さくて、頭がいい女の子と、でかくてバカで友達が1人もおらんうちとじゃ・・・住む世界が違うんやて』

同じことを言う、と今と昔を照らし合わせた。
自分は彼女を変えるために、何が出来た?誰かをよくするために、何が出来た?

『ねぇ・・・キリダさんやよね。キリちゃんって呼んでいい?』

彼女が目をカッと開いたのを、今でも覚えている。

『友達になろう』

あの時のような意志が再び目覚める。友達ももういじめさせないし、化け物とも呼ばせない。

ジュマの横に顔を突き出し、精一杯声を出す。

「助けさせてください!」