冗談を言っているというのはジュマ自身分かっている。冗談を言ってられない状況になったのは、秋乃がジュマの携帯を通して電話をかけた時だ。
「とにかく電話する。ジュマ、携帯貸して」
「あっ、はいっ」
携帯を手渡されると、秋乃は苛立ち顔で電話する。しばらくして、相手が電話を取る音がした。
「・・・はい」
「はい、じゃないわよ!どこにいんの?」
まるで帰りの遅いサラリーマンに対し、しびれを切らして電話する主婦のような言葉を口に出す。そしてその後で「どこでもいいだろ」という言葉が聞こえる。
「こんな時間まで帰らないなんておかしいでしょ!仕事?」
「一応な。手こずってる」という言葉が聞こえてくると、余計に起こったらしく声のボリュームを上げて秋乃は言う。
「手こずってる!?そういうことはあらかじめ連絡しろって言ってんでしょ!迷惑かけて!」
まるで彼女が母親のようだ、とエリカは何となく思う。
「なぁ~にが『聞こえるだろ』よ。まったく、書類さえ落としてこなければ・・・」
少し話を聞いてから「は?何?」と聞きながら「ああそうよ」と言っていきなりエリカのほうを向く。
「届けてくれたのよ。周りに気付かれないように気にかけて、いつもの子がわざわざ伝えてくれたの」
もう彼らにとって自分は「いつもの子」という事になっているのだろうか、とエリカは思う。


