トリップ


ただ金を貰うために、仕事のために守っていただけなのに、何故こんなにも危機感を感じているのか、自分にもよく分からなかった。

分かっているのは1つ。
今の自分にはかなりの闘争心が沸き起こってきている。

こいつを殺す。それだけがもはや俺のただ1つの今の目標となっている。余計なことは考えなくなった。

殺さなくては、後で起こるのは自分が一番恐れていた最悪の事態―――。

拳を握り締め、首を持ち上げた。
締められている事など頭から抜け、渾身の力で起き上がり、思い切り頭突きを食らわす。
額から液体が伝う感触があった。俺か、相手の血だろう。

男がよろめいて「チッ」と悪態をつく。

「いきなり本気か」

顔をしかめた男は、血で濡れた小型ナイフを立ち上がった俺に向ける。

「金目当てで守ってた連中だろうが。そこまで本気になるか?自分を軽蔑してきた奴らだぞ」

ああ、そうだ。俺はあの学校の連中は嫌いだ。だが、あくまでそれは「全員」じゃない。

「バカたれ」

俺はほんの少しの意志を宿した言葉を男に向けて発する。