「あんまり殺す時に内臓を傷付けるなよ」
「分かってる。見つけて拉致って、相手の気付かないうちに殺すんだ」
「肝心の依頼主は記憶喪失だし、もうヤケッつーのか?」
「金になるしな」
クックッ、という薄笑いが聞こえて、気味が悪くなる。もう少し話を聞いていたかったが、何の悪戯のつもりなのか、沢山集まっていたカラスが一斉に俺のほうを向いて鳴き出したのだ。
こいつら俺に死ねって言うのか?
悪態をついて折りたたみナイフをポケットから取り出そうとジーンズに手を入れると、俺は首を傾げる。
確かにナイフも入っていたが、別にもう1つ何か入っている。
・・・お守り?
しかも、かなり使い古されたものだ。
誰だこんな物を入れたのは、と顔をしかめる。俺は受験に来たわけじゃないんだぞ、と言いたくなる。
そしてふと思い出した。これのジーンズ(あの高校は私服が許されているので、慣れている生徒はほとんど私服なのだ)は確かあのデパートに行った時も着ていたものだ。
そして、別れる時にモトジマにポケットに何か入れられたのを思い出す。
あの時、これを入れたのか。
余計な事を、と思いつつ、俺の頬はほころんでいた。