「あのぅ・・・何でしょう・・・」
怯え気味になりながらリクに言うと、彼はエリカの前に携帯ストラップを突き出した。
「・・・さっき、落としてたぞ。」
「へ?」
エリカの手にそっと落としてやると、グッと顔を近づけて言う。身長差が激しいのもあって、リクの声が小さいからだろう。近くで言われても聞き取りづらかった。
黒い髪の隙間から大きい瞳が見える。
それが綺麗に黒光りしているように見えて美しく、それであって虚しさがある色をしていた。
それから背を向けてクルリと校舎出口の方に向かっていった。
リクが去っていくと、ポカンとしていたエリカに、後ろでその様子を見ていた
美喜(みき)が興奮した顔で言った。
「いいなー。あの先輩、頭も良いしカッコイイし、結構人気なんだよ!」
「へーそう・・・」
「リアクション薄いなー。もっと喜ばないの?」
「あの人・・・怖いし・・・。」
「贅沢だなー。話しかけても答えてくれないのに、これって滅多にない機会だよ?」
(滅多にない機会か・・・)
エリカにはそうは思えなかった。
大体、好きでもない相手に会ったっていいことはない。・・・しかし、リクが漂わすあのオーラだけはどうも引っかかり、気になって仕方なかった。


