トリップ




「あいつ、今も事情聴取中かな・・・」

何度も後ろを振り向いてキャプテンは確認する。

「でも、なんか上手い言い訳して逃げて来そうやし・・・」

もしそうだったらまずいぞ、と頭を抱えた。さっきのことで、たぶん相手もカンカンに怒っているに違いない。後ろから刺して失神させる事もなくはないだろう。

(刺される?うち、刺されてまうのか・・・?)

捕まるのはいいが、長い事痛い目には遭いたくない。そう思いながら進んでいくと、いつの間にか自分の住むマンションの前に来ていた。
どうしようかと思ったが、どの道人ごみの多い方に行くなら、自転車は邪魔になる。キャプテンにとって最大の武器だったのだが、ここは手放すしかない。

一度部屋の中に隠れようとも思ったが、相手中に入ってきたら兄弟が危ないだろう。悪くしたらエリカにまで被害が及ぶ。

「駄目か・・・」

マンションに背を向けると、そそくさと街の方に入っていく。一瞬学校を思い浮かべたが、そこで「いいや、あかん」と言い聞かせる。教師でも勝てそうにないだろう。

(そういえば、あのおっさんってジュマのバイトの先輩じゃ・・・)

ないのか?走りながらキャプテンは疑問を感じる。少し考えて「まあ、きっとそう言えって脅されたんやろ」と片付ける。
だが、1人ではとても逃げ切れそうにない。シュンリや子供たちに助けてもらったが、自分の足では追いつかれてしまうだろうし。

ふと、ポケットから携帯を取り出した。立ち止まってじっと見つめる。

『何かあったら、すぐ言えよ』

言いたいけどさ、とキャプテンは溜め息をつく。