トリップ


キャプテンは小久保の方を向き、迎え撃つ体勢を取った。小久保の「何だあいつ」と疑問符を浮かべる表情が見えた。
相手の腕が伸び、キャプテンの胸ぐらを掴んだと同時に、キャプテンは息を止める。空気が抜ける音を頭に浮かべた。

フッと自分の体の力が抜け、体が浮き上がる。急に力の抜けたキャプテンの実体に、いきなりどうしたんだ、と小久保が首を傾げた。

相手に見えないのを良い事に、すぐさまキャプテンは小久保の体の中に入って行った。視界が変わり、目の前には上の空の表情を浮かべた自分が見える。

(成功、か。よし)

上手くいった、と不敵の笑みを浮かべると、自分の実体をおぶって先ほどの公園に連れて行き、一応ベンチに寝かせた。

―なるほど、この能力ってこのシーンのためだけにあったんだな。ずっと前から登場してたけど。

勝った、と思って一汗かいた気分になるが、その後重要な事に気づく。この今時分が操っている小久保をどうするかだ。遠くに行くと自分が帰って来れなくなるので控えたい。

悩みに悩んだ末、結局公園を囲んでいる塀の外側にもたれかからせる事にした。これなら少しくらいの間は見つからないだろう。自分はさっと公園のトイレまでダッシュすればいい。

小久保の中から出ると、猛スピードで自分の中に戻り、女子トイレに隠れた。しかし、小久保の目にはついていたらしく、すぐにドアを叩かれた。