「あれ?俺のパーカーって、どこ行った?」
「血がついとったで洗った。内側は見られんと思うけど、外側はまずいで。そろそろ乾くと思うよ。夜にこっそり乾かしたで」
「見つからなかったか?」
「大丈夫、兄弟が寝とる時間と親が帰ってくる時間まで間があったから」

そう言いながら忍び足で服を取りに行くと、キャプテンは「ほらな」という顔でパーカーを渡す。

「世話焼かせたな、悪ぃ」
「ああ、いいよいいよ、焼かされて困るもん無いで」

焼きの意味が違うだろうが、とケイラは苦笑し、すたすたと出て行こうとする。その時、兄のシンゴの足音がしたので、慌ててケイラの腕を引き、部屋の中に戻す。手でケイラの口を塞ぐと「静かに」と耳打ちした。

足音がリビングの方に遠ざかったのを聞き取ると、さっと手を離す。

「危なかった・・・。兄貴の奴、なんちゅうタイミングで・・・」
「ホントだな」

部屋を出る前に、ケイラは心配そうにキャプテンを見るが、先のことも知らず、キャプテンはニコニコと笑っていた。