トリップ


何が起こったのかよく分からない。

それが毒と分かったのは、傷口から鼻を突くような異臭がしてからだ。小久保のかぎ爪に塗られていたらしい。

「その毒、麻痺専用なんだ。一時的だけどな」

横から小久保が現われたと気付く前に、ケイラはこめかみを蹴られて倒れこみそうになる。
ふらついた所で足に力を入れる。床を踏みしめ、ポケットからあるものを出した。

「あ」

相手がケイラの取り出した物に気付いたと同時に、ストロボ弾が光を放つ。

そのまま床を蹴り上げ、窓を破って外に出た。

力が抜けた時、月が雲に隠れる。