祭りが終盤に差し掛かった頃、最後のたこ焼きをちびちびと食べ終えたリクは、懐かしそうに呟く。独り言のようにも聞こえた。
「アンタと来た時以来だな」
幸福だった記憶を蘇らせるように、しみじみとした声だった。
「アンタ・・・?」
「あ、いや、こっちの事だ」
そらすようにして言うと、リクはちらちらとエリカを何度か見て、まるで荷が下りたように力を抜くと、不意にこちらを向いて手を前に突き出す。
両手でエリカの頬に触れると(いや、触れると言うよりも、大きな獣の卵を持ち上げるような無造作さだ)、そのまま右手でそっとなぞるようにし、驚いたような顔で小声で「似てる」と呟く。
まるで、身近な者が有名な画家の絵とそっくりな絵を書き、それを目にしたような顔だ。
誰に似ているのか気になったが、優しく頬をなぞられて緊張しすぎていたためか、聞く余裕すらなかった。
そっと手を離すと、リクは真顔に戻って小さく息を吸う。
「今日限り」
「今日?」
「本来なら自分の担当した相手としか喋らない事にしてるんだ。君とのこともそのつもりだったんだが、なんだか、話しやすくて」
話を聞きながら、彼がどのような順序で話しているのかを頭で整理する。


