「はじめまして。」

横から声をかけてきたのは、さっきの少年。

「私、ジュマと呼ばれています。よろしく」

私?女ですか?
ジュマと言うのも、不思議な名前だった。
気さくな話し方で、敬語と言う事から、下っ端気質にも見える。

「ふーん・・・ジュマね。うちはキャプテンでいいわ。」
「キャプテン・・・さん。ふふっ、そう呼ばせていただきます。」

本当に礼儀正しい。

「ジュマって、変な名前やね」
「ああ、いえ。これはあなたと同じく、自分の気に入っているあだ名というか、ニックネームなんですよ」
「本名は?」
「・・・。一応、苗字は笠名塚(かさなづが)と言います。苗字だけでも、覚えられやすいんですが・・・」
「ん。わかった。覚えとく」

何故名前を教えたがらないのだろう。キャプテンは何となく気になりながらも、気にしないことにする。

・・・・

部活見学をしてから結局、文芸部に入ることにした。
文芸部にはなんとジュマ一人しかいないらしく、部員に困っていたらしい。というより、よく部員も集まらないで1人でやっていけたものだ、とキャプテンにはある意味立派に思える。

部活の時間になり、図書室に入ってパソコンに目を向けた。いつも小説執筆に使っていたのがノートパソコンだったので、大きいパソコンを使うのは数年ぶりだった。
ファンタジー小説を書こうと思い、置いてあったペンを何度もクルクルと回す。

早速人物紹介に胸を躍らせた時、隣からジュマが声をかけてきた。


「・・・あの、一つ注意してもいいですか?」
「?」
「東京の裏路地は危険区域ですから、気をつけてください。」

そんなこと、ケイラのこともあって、危険だと言う事は分かっていた。