「いったぁい!今のは痛かったわよ、リク!」
「知ったことか」
秋乃がわざとらしく声を上げても、リクは動じずに言う。これでも効かぬか、と言いたそうな顔で、秋乃は怒った顔を作って言った。
「もう、罰として息抜きしてきなさいっ!」
「どうしてそうなる」
「これはおねーさんの命令よ!ほら、さっさとしなさい」
「く・・・」
呆れたのか言葉がなくなったのか、リクは何も言おうとはしなかった。
「はいはい、分かりましたよ。息抜きしますよっ」
リクは我が儘な子供のように言う。てっきりリクは1人で行動していくかと思ったが、意外にもエリカの手を引いて祭りの会場に向かっていく。
「本当は、一緒に行けて嬉しいのかもね。リクの奴」
「そうですね」
残った2人の会話が耳に入る。
(いや、それは完璧に無いと思いますよ。先輩の場合・・・)
彼らにそう言いたくなる。
リクが何も言わないので、エリカは心配になって話しかける。
「あの・・・」
「何だ」
「1人がよかったら・・・1人でいいですよ、先輩」
一応気遣ってそう言ってやると、リクはピタリと足を止める。


