トリップ


「秋乃(あきの)さん、人のことムッツリとか言わないで下さいよ」
「あれ、ジュマ聞いてたんだ」
「聞いてたんじゃなくて、聞こえたんです」

祭りに来ていたらしいジュマに言われ「あ、そう」秋乃と呼ばれた女性は話を片付ける。
そして、本題とでも言うようにエリカを見る。

「ふぅん・・・リクと慣れて話してるところ見ると、あんたが親想いっ子?」
「え?」
「リクから聞いたよ。あんたがオーディションに出たの、親の期待に応えるためでしょ」
「え・・・先輩、喋ったんですか?」
「ああ、愚痴った」

愚痴を言っていたのかこの人は。
守り屋らしき秋乃は、フフッと柔らかく笑うと、リクにこう聞いてきた。

「ねぇ、リクも律儀にこの場所見張ってないで、どうせならその子と行って来たら?」

その言葉に「はぁ!?」と驚愕の言葉を上げたのは、リクだけでなく、エリカもだった。

「何でそうなる。仕事を投げ出して遊べるものか」
「ホントに頑固ね。あたしらは10人ずつ前半後半に分けられてるし、あたしも前半遊んできたから、律儀に仕事に励まなくてもいいよ」
「そうしてくださいよ、あとは任せて」

ジュマも参加して言うが、エリカはぶんぶんと首を振っていた。

「いやいやいや、そんな、さすがにそういう意味で邪魔してまったら・・・。それに、女よりも男友達と行った方が・・・」
「いいのよ、こいつまともな男友達いないから。なにせ、こんな頑固な人だからね」

秋乃の言葉に、リクはムッとしたように肘で秋乃の肩を強めで突く。