キャプテンの目の前で、エリカは走り去っていく。キャプテンは彼女に逃げられた男のように虚しそうに声を出す。
「エリカちゃぁぁん・・・」
途中、キャプテンはついノリで「寄り戻してくれー」と言いそうになる。
これではGLになってしまうではないか。
・・・
キャプテンが見えなくなるところまで来ると、エリカは息を吐く。
―約束がある、なんて・・・取って付けたこと言ったなぁ。
多分、ばれてると思うけど、とエリカは思う。後で聞いた話だが、途中から加わるのは男らしく、彼が少し気まずくなってしまうのではないかと思ったので、キャプテンには悪いが、離れていったのだ。キャプテンとしても楽かもしれない、とエリカは思う。
鳥居近くの木々に入ると、もう帰ろうかと足を進める。
すると、一番太い木の幹に、人の影がある。着物姿で、腕を組んでいる背の高い男。誰かと待ち合わせしていると言うより、面倒臭そうに立っているように見える。
木の幹の横から、ウェーブがかった黒髪が見えた。


