トリップ


しばらく色々な店を回っていると、エリカが独り言か「思い出すなぁ」と呟いた。

「何を?」
「ああ・・・岐阜のほうの祭りでさ、小学生の頃、近くの公園でかき氷食べながら下駄投げしとったやん。あん時、キリちゃんがこけてさ・・・」
「んー・・・こけた事に関しては記憶が・・・」

本当は覚えていたのだが、恥ずかしいので知らぬフリをする。
エリカはキャプテンを見て、苦笑いして言う。

「オーディション受かったばっかなのに・・・何か、恋しくなってきた」
「・・・うちも」

ポカンと呟くようにしてキャプテンも言った。

そして、祭りの後半に差し掛かった所で、エリカはキョロキョロとしてキャプテンに言った。

「うち、ここから1人で行動する」
「えぇ?何で?一緒に行こー」
「ううん、大丈夫。もうすぐ来るやろ?邪魔したらあかんし」
「邪魔じゃないって、行こーよ」
「いいって」

まさか、気を遣ってくれているのだろうか。

必死になってエリカを呼び止めようとする。しかし、嘘か誠か、彼女が「うちも後半から約束があるで」と言うので、納得せざるを得ない。取ってつけたような台詞だが、そんなオーラが出ていた。