トリップ


デパートを出た後も、何故か二人は一緒にいた。エリカがついて来るのもあったが、リクとしても、何となく離れ難かったのだ。
気付かなかったが、もうかなりの時間が過ぎていたらしく、空は夕暮れに染まり、オレンジ色になっていた。

「結構……長居してたな。」
「うん。」
「時間って、不思議だな。今日にしても、今までにしても、時間が過ぎるのは早い」
「例えば?」
「……10年前までチビだった俺も、こんな体になったし、顔も随分と変わり果てた。」

思い詰めた顔で、リクは飛び行く烏を見つめながら、呟くように言った。
公園の近くに行くと、急に分かれ道になった。『集いの場』への道と、キャプテン達が住む所への道。公園には誰もおらず、ただ電気が付いているだけだ。

「先輩は、『集いの場』の方に行くの?」
「まぁな…」
「じゃあ…ここで…?」
「…だろうな。」

少し苦々しい顔で言いながら、リクは急にこちらを向いた。

「モトジマは、門限はあるか?」
「な、無いです。」
「そうか」

それだけ言うと、リクは椅子の無い公園に植えてある芝生の上に座り込んだ。

「じゃあ、少しだけ話せるか?」
「ああ、はいっ」

少しだけと言わず、もっと話したかった。しかし、そんなこと言えるわけもなく、エリカも芝生に座り込む。

「この学校、少しは慣れてきたか?」
「はい、仲いい子も出来て、楽しい。」
「他の学校よりも危険度が高いこと、分かってるのか?」
「まあ、それもそうやけど…住めば都って言うし…。」
「……ふっ」

リクが小さく笑う声が聞こえた。背中合わせになっているため、顔までは見えなかったが、確かに笑った。