「あ、さっきの服屋の前にいたガキじゃねぇか」
「ああ、アイツか。」
よく見てみると、あの二人は先程のヤクザ風の男達の中にいた男だ。
「紛れてたのか。」
そう言うと、リクはあの二人の始末の準備として、ズボンの隠しポケットから折りたたみ式のナイフを取り出す。
「お、もしかして守り屋?」
「そういえば、あのターゲットのちびっ子も紅涙の生徒だからな」
「おい、あそこが雇ったのか。」
ベラベラうるさい。
そう思って睨みつけてやると、男達はニヤついて言う。
「その顔だと、お前、あねチビと赤の他人じゃないみたいだな。」
「女は守り抜かなきゃいけないっつう騎士道?」
「へぇ、色男じゃん」
下品な会話だ。
リクは呆れて溜め息が出そうになる。
別に騎士道のつもりではなく、仕事だからだというのに。
「うるさいから、さっさと始めてくれないか?水槽のナマコが腹を空かせてるんだ。餌やらないと。」
そう言ったのは、勿論嘘だ。相手に出来るだけがむしゃらに攻撃してきてもらいたかったため、わざと挑発したのだ。
男が1人、こめかみに蝶の入れ墨が入った男だ。だいぶ手慣れしているらしく、簡単に避けられる攻撃をしず、正確に急所を狙って来る。目や首、手首や胸、深く刺すような体制になると鳩尾まで狙って来た。
ナイフがトンボのように俊敏に動き、今にもリクを仕留めようとする。
これは少し余裕がなくなって来た。
苦笑すると、リクはスピードだけ本気を出してみた。ナイフをチャンネルを持つかのような手つきで構え、男がリクに襲い掛かる時、交わし様に男の左頸動脈の辺りを切る。一度男が振り向いたが、流れ出た血が目に飛び込んだ時にはもう男の意識はない。
やはり本気には敵わなかったか。
期待していた訳でもなかったが、安心感もない。


