トリップ


「・・・所で・・・何でついて来とんの?」
「悪ぃかよ。」

ケイラの気配には、ビルを出た頃から知っていた。
いや、ケイラ自身がわざと気付かれるように来ていたのだ。

「何で付いてくんの?」
「別に・・・」
「何すか、もしかして友達になりたいんすか?」
「!・・・そういうわけじゃ・・・」
「噛み噛みやし」

殺し屋を前にこんな強気に出られるのが不思議に思えたが、その事は気にしなかった。なぜなら、「7年前」も、同じようなことがあったのだから。

「こ・・・殺し屋が友達なんか持っても・・・・意味ねぇっての。」
「やったら何で付いてくんの?」
「・・・お前、興味が湧くというかさ、他の奴とは違う」
「他の奴?」
「人格とか、だよ。久しぶりに『普通になれた』ような感覚だよ」
「普通・・・」

彼は、何かを押し殺している。具体的には言えないが、人としての「何らかの欲望」を押し殺しているように見えた。
そう思ったキャプテンは、ある言葉を口にした。


「じゃあ・・・友達になってくれる?」


7年前、大切な人間にいわれた言葉を、同じように真似して言った。