「キャプテン…」

少女がそう呟くのが聞こえる。偽名なのかニックネームなのか知らないが、顔と同じくバカげた名前だ。

「な…何やっとんの?」

方言を使っている。

「…この子に、何しようとしとんの?」

バカ面で、どこか見覚えのある顔のキャプテンは、俺の持っている銃に怯えながら聞いてくる。

理由なんて一般人が聞いてくれるはずもないだろうが。
そう思った俺は、銃をしまい、キャプテンを押しのけて工場から出て行った。

俺と同じ苗字の、【檜】と言う苗字の少女を残して。

……

助かった。

私は呆然としながらその場に座り込む。
なぜかは知らないが運よくキャプテンがここに来たため、リクはそのまま立ち去って行く。

「ど、どうしたの?変な奴に銃向けられとって…」
「ゴメン…大丈夫だよ。」

実際は大丈夫ではないのだが、心配をかけたくないため、わざと元気そうに言う。

「ところで、キャプテンはどうしてもここに…」
「うちは…バイト中に人が殺されたで、見に行って…近くにシュンリちゃんがおったから声かけようと思って…そしたら、さっきの奴に連れてかれたの見たで、ついて来たら、これ。」

先程の話を今起こっているかのように話す。
一般人に銃は怖かったろうに。
私はそう思いながらリクの顔を思い浮かべる。
キャプテンが来る前に聞いておけばよかった。
リクに、彼自身かもしれない天李のことを。