1人の幼い少年が写った写真だ。
髪が黒く、クセ毛を無造作に伸ばし、そこそこ整った顔の少年。2歳ほどと覗えた。
顔立ちが私に似た少年。
死んでしまった両親曰く「知らなくていい」らしい。
だが、私はそれを放って置くことが出来なかったため、日本を出た時に一緒に持ってきたのだ。
写真の少年の下に「檜(カイ) 天李(テンリ)」と書かれてあった。たぶん彼の名前だろう。
探すわけでもないのに日本に持ってくるのもどうかと思うが、あのまま中国を出たら、もうこの写真は処分されていたかもしれなかったため、とりあえず持っておこうということにした。

あの写真について、お父さん達は、何を隠してるの?

彼らが生きているならば、そう聞きたかった。
深く考えていると、急に睡魔が襲ってくる。
それも仕方ないだろう。もう深夜10時になっていたのだから。

「うう・・・、眠い。」

そう言いながら眠りに落ちていく私。
瞼が重くなることなど滅多にない私だが、瞼が重くなると意外と耐え難いものだと思った。そのまま小さなベットの上に寝転がり、シンプルな私服のまま眠った。


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ぼんやりと視界が揺らぐと、私は朝になっていたのかと気付いた。
起床した時は気持ちがいいと感じる。
時計を見てみると、5時30分、夏だから朝が早いらしい。
ゆっくりと体を起こし、昨日買っておいた春雨スープに湯を注ぎ、時間を見ながら食べる。
私は胃が小さいらしく、これくらい食べるともう満腹になった。

すると、近くに置いてあった携帯電話が鳴り出す。

昨日仕事があったばかりだから3日は仕事は来ないと思っていたのだが、意外にも仲介業者から電話があり、「仕事だ。」と言ってきた。
こちらも朝っぱらから人を撃つのは気分が重いと言うのに。