【完】歌姫、そんな声で鳴かないで!

「いっ……なっ!?」



慌てて後ろを振り返ると、ウイッグを取って、ツアーTシャツの姿のヤス。



伊達眼鏡をしているが、化粧がまだ残っていて、ヤスがきららだとばれかねない。



「何帰ろうとしてんの?言ったでしょ。伝えること、あるって。」



いつもの上からの口調で言葉が降って来る。



「ミタカカオリ、こいつ、借りるから。」



「はいはーいどうぞっ!じゃあまたねーん。」



後頭部を掴まれたままの私と、掴んだヤスを交互に見た香織は、にんまりと笑うとさっさと帰ってしまう。



「やっぱり、あいつは苦手。嫌いじゃないけど。」



ヤスはなんだか困り顔で、香織の後ろ姿を見送った。