「こいつ連れて、帰る。」



いつものへこへこした地味山ダサ男のヤスじゃない声が、教室に響く。



流石に、クラスメイト達もその発言にざわざわとし始めた。



ヤスの態度もそうだし、私との組み合わせのことも。



「何を言って…!」



数学の女教師はヒステリーな声で怒ろうとしたが、ヤスはその黒縁の伊達眼鏡を外し、教師を直に睨む。



「もう一度だけ言う。俺はこいつを連れて帰る。許可を取りに来たんじゃない。ただの報告だ。」



濁った漆黒に捕らえられた教師は、もはや声も出ないでいる。