撮影も終わり、私はいつもの冴えない『花巻飛鳥』に戻る。 「また、仕事出来るといいんだけどな。」 「ありがとうございます。」 監督にそう言ってもらえるのって役者なら凄く幸せなことだと思う。 だけど、私は役者じゃないから。 この仕事をしたのは、仕事をしたかったからじゃなく、あいつの秘密を知るためだから。 だから、はい、とは言えず、一礼だけして、右京さんと待ち合わせしていたところへ駆け出した。