【完】歌姫、そんな声で鳴かないで!

私が着替えて出てくると、スタッフ達がオーバーなくらいざわつく。



「驚いた。本当に変わるもんなんだ。」



監督の瞳には男の『巻田アスナ』がいる。



「…始めましょう。」



なんだかそれが、心地悪くて、私はただ冷静にそう返す。



「クールだね。その意気で頼むよ。巻田さん。」



監督も私に向かってふっと笑うと自分の位地へつく。



私もセットへ向かった。不思議と、緊張はなくて、足はすっと動いた。