座敷わらしの恋

「私と一緒にいてくれて、ありがとう。楽しかったよ」


「ああ、俺も楽しかったぞ」


何を改まって言ってるんだか、と思いながらも俺は答える。


「悠君、最初はこの木にも登れなかったんだよ。覚えてる?」


最初?

ああ、得意の昔話か。


「あー……悪い、覚えてない」


木登りくらいはきっとしたんだろう。

ぼんやりと、そんな思い出が頭に浮かぶ。

でも、そこにやっぱり紫はいない。

今よりずっとずっと小さかったであろう紫のことを、俺はこれっぽっちも覚えていないのだ。