「そろそろ花火の時間だね」


紫に言われて時計を見ると、確かにそんな時間だった。

しかし、どこもかしこも人の山で、落ち着いて見られる場所などない。

俺はまぁなんとか見られるが、紫はちっこいので人が邪魔でちゃんと見られないだろう。


「いいところ、知ってるよ」


悩む俺に気付いたのか、紫が「こっちこっち!」と手を引っ張る。

この辺に詳しい紫ならいいところを知ってるだろう。

促されるままついていくと、辿り着いたのは、初日紫が登っていたあの木だった。