「ケイ! 大丈夫か!」

「……あれヨウ。お前、なんで此処に……」


「お前のダチが知らせてくれたんだ。とにかく話は後だ。立てるか? 手ぇ俺の首に回ッ、ケイ?」


傷に障らないようケイの腕を自分の首に回させてようとした瞬間、ケイが拒むように腕を掴み返してきた。

手が震えている。目で見て分かるほど、震えている上に体温が低い。血が通っていないのではないか? と思うほど、手が冷え切っている。


顔を歪めてケイは「悪い」と謝罪を口にした。


「俺……おれ、お前を…裏切ろうとした。一度は日賀野の脅しに乗ろうと、したんだ。お前、裏切ろうとした……おれッ……こんな情けねぇ負け方して、情けねぇッ」


下唇を噛み締めるケイは早口に言葉を発してくる。傷に障るのではないか、と心配するほど。

「おい落ち着け、ケイ。傷に」


「俺はっ! 俺は、お前に合わす顔がないんだ。関係ねぇ利二巻き込んじまったし……ッ、向いてねぇよ……お前の舎弟…俺なんか……ぜった……いっ、なあそうだろ! ヨウ! 俺は最低だっ…」

「……ケイ」


「ちくしょう…チクショウッ……情けねぇッ…なさけねぇ…」


自分の膝を叩いて自分に対する憤りをぶつけるケイの隣に腰を下ろし、ヨウは落ち着けと首に腕を回した。

振り解くことさえしないケイは、隠すように片手で顔を覆ってしまう。

「最低だ」

肩を震わして自分への憤りを口にしていた。


それでも彼は気丈だった。敬意を払いたいくらいに気丈で、強かった。

怒りと悔しさを噛み締めているケイにヨウは掛ける言葉を探したが、何も見つからずただ様子を見守ることしか出来なかった。

何が言える、舎弟のピンチにさえ間に合わなかった自分に。


脳裏に皮肉った笑みを浮かべるヤマトの顔が掠った。


奴を喜ばせる結果になってしまったことが悔しくて、何も出来なかった自分に腹立たしくて、今のこの状況に苛立って、知らず知らず身体に力が入る。

回している腕に力を込め、自分の悔しさと舎弟の悔しさを吐き出す。


「ダッセェよな……テメェも、俺も………なあ? ケイ」


⇒#05