「なあケイ。始業式ダルくね? フケね?」



俺を解放したヨウは机上に上半身を預けて、気ダルそうに俺に提案してくる。


ったく、お前はさ……。


「初っ端からそれかよ。少しは頑張って学業に励め」

「始業式はオベンキョウじゃないって。真面目不良くん。なーあー、いいだろー?」


「ケーイー」積極的にフケようと誘ってくるイケメン不良に、


「仕方が無いな」


肩竦めて俺は着飾った同級生に目尻を下げた。


二年の初っ端から俺は不良に振り回されそうだけど、それもいいさ。


だって俺はヨウの舎弟、振り回されることは慣れなれっ子だ。

慣れねぇとやっていけねぇよ。 


「今日は好い天気だから、体育館裏は気持ち良さそうだよな。ヨウ」


あの日、あの時、ヨウに呼び出された体育館裏の空と、今の空は同じ顔をしている。


俺達が舎兄弟になった日も、こんな風に晴れ渡っていたっけ。


その話題を切り出せば、


「お前がビビッていたあの日だろ?」


ヨウが笑い飛ばしてきた。


「ビビるに決まっているだろ。何せ、不良に呼び出されたんだから!」


俺は大反論。

でもヨウは構わず言葉を重ねた。


「ま、今じゃお前も不良だから安心しろって。同じクラスになった記念にイメチェンでもしてみるか? 髪の色をピンクにしてさ!」

「うーっわ。舎兄弟揃ってピンク? それって超キモイ!」


俺達はまた声を揃えて笑った。


こうやって自然に笑える時、不良のヨウも地味な俺もそんなに大差のない、ただの高校生だって思える。


ヨウもきっと、俺と同じ気持ちを抱いているに違いない。違いないんだ。



な? そうだろう、ヨウ。




END