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季節は巡って春。


桜の蕾が花咲く頃、俺は高校二年に無事進級し、始業式を迎えていた。



進級できてホッとしている。


自業自得というのはこのことで、付き合いでサボりにサボりまくっていた俺は(あくまで“付き合い”のせいだと言い張る!)、進級できるかどうかの瀬戸際に立たされ、高一の冬に壮絶な地獄を見たんだ。


まさか補習組に入れられるなんて思いもしなかった!


奉仕活動までして、どうにかこうにか進級させてもらったんだけど……サボりは良くないよ。


担任と二者面やら、学年主任の嫌味やら、保護者の呼び出しやら、色んな地獄を見る羽目になる。

上辺だけでも真面目に授業に出て、テストもそれなりに点数とって、風紀検査も適当にクリアーしないとクソ面倒なこと極まりない。


だから俺、今年はヨウ達に流されないよう“マイペース”に過ごすと腹に決めているんだ。


それなりの仲になったんだ。

言いたいこともある程度は言えるまでになったし、今年は俺のペースで行かせてもらう。


不良達に振り回されない。真面目に過ごしてやる!

仲間に地味不良と呼ばれているけれど、絶対にヨウ達には流されない!


例え今年からモトやキヨタがこの学校に入学してくると知っていても、俺は俺のペースを保ち続ける! 強い意思を持て、俺!


うんうん頷きながら廊下を大股で歩き、強く意気込んでいた俺は、颯爽と自分の教室に入る。自分の机に直行はせず、生徒達が群がっている黒板に足を向けた。


皆のお目当てはクラス表一覧だ。


黒板に自分の新しいクラスと教室が割り当てられた紙が貼られている。


進級するに伴い、クラス替えをされるんだ。ヤだな。


正直、今のクラスは居心地が良かった。


弥生やハジメ、ジミニャーノがいてくれるから俺の心のオアシスになっているのに。


そして申し訳ないけどヨウやワタルさんと一緒にはなりたくないな。


勿論、あいつ等のことは友達だと思っているけれど、同じクラスになったら世話が大変なんだよ。

十中八九、面倒事を運んでくるだろうし。本人達の前では言えないけど。


「えーっと俺は普通科の五組か。あ、利二達は……一緒、良かった!」


俺の愛しのオアシス達が一緒、二年の学校生活も安泰だ!

でもハジメや弥生とは別々になっちまった。貼り出されている模造紙によるとあいつ等は四組だそうな。


羨ましいことに彼等は同じクラスだ。

いいよなぁ、俺とココロは順風満帆な関係は築き上げているけど他校同士。


一緒のクラスになることは絶対にない。

他校カップルのつらいところだよな。


おっと、そろそろ教室に行かないと、もうすぐチャイムが鳴る!

駆け足で教室を飛び出した俺は、急いで割り当てられた教室に向かう


「えーっと……五組は」


二年の教室フロアにやって来た俺は、自分の教室を目で探す。

三組、四組……あった五組だ!

利二達はもういるかな?


あいつ等のことだから、早く登校していると思うんだけど。


気の置けない奴等が一緒、それだけで軽快な足取りになる。

鼻歌を歌いつつ五組の教室に入ろうとした時、

「どうしよう」

何処からとも無く暗い声が聞こえた。軽く声の主を流し目にする。

ある男子生徒が重々しく友達に愚痴を零していた。


「五組の中に……いるんだけど」

「どれどれ? ……うーわぁ。マジだ。どんまい。あ、しかも」


あ、しかも、で会話している二人が俺を見てくる。


何? 君達。地味なポクに何か御用?

なんでそんな怯えた眼で……あ、いや、慣れたよ。

不良と絡んでいる俺と距離を置きたいんだよな。


ふふっ、その目はちょいと傷付くんだぜ!


だけどちょっと待ってよ。

しかも、が俺を指す言葉なら、教室にいると指している生徒は誰のことだろう。