「お、おい!」
目を見開くヨウはお得意の戦法を組み立てなくても良いのかと声音を張って地を蹴り、ヤマトの後を追った。
しかしヤマトの耳には届かないようだ。
雑魚になど目もくれず、飛んでくる拳や凶器も避けるのみで極力足に集中しようと努めている。
ごり押しで進もうとするヤマトに違和感を覚えているとチャリ組のモト・キヨタが遅れて到着、自分の姿を見つけモトは大声で伝えてきた。
五十嵐の下に人質の片割れ、帆奈美がいると。
合致した。
だからヤマトはあんなに猪突猛進行為を――垣間見た彼の切迫する顔にヨウは軽く言葉を失ったが、一変して微苦笑。
指笛を鳴らし、自分も援護要請を出す。
挟み撃ち作戦により、向こうは新たな人手に混乱している。
数人抜けても形勢がひっくり返るような事態にはならないだろう。
どちらにせよ、五十嵐を仕留めなければ終わらないのだ。
リーダーとして、チームのため仲間のため自分のため一旗挙げて来なければ。ヤマトだけに好い格好させるわけにはいかない。
ヨウの援護要請にチャリから飛び降りたキヨタが真っ先に駆けて来た。
彼は持ち前の手腕を生かすため、ヨウのために道を作ろうと脇をすり抜け、片っ端から敵を相手取る。
近くにいたシズがヨウと肩を並べ、
「真っ直ぐ進め」
五十嵐までの道を作ってやると宣言。
「お前は一直線に走れば良い」
彼は小さく目尻を下げてくる。
頼もしい発言に頷き、真横から飛んでくる鉄パイプの攻撃を避けるため身を低くする。
「ヨウさんに何するんだ!」
死角から飛んできそうになる鉄パイプを死守するため、モトが敵にチャリごと突っ込んだ。
なんとも無茶振りな攻撃ではあるが、
「勝ってきて下さい!」
背後から飛んでくる声援にヨウは応えなければと加速した。
前方を走るヤマトと同じように努めて足に集中し、仲間達の援護の下、倉庫の中に飛び込むことに成功する。
視界の悪い一階フロアにも敵の姿あり。
目算で見たところ、ざっと15人前後というところだろう。
だがヨウは一切を仲間達に任せ、五十嵐のみ目で探すことにした。
ハッと上層階を見上げ、軽く息を呑む。
第六感が疼く。
きっと五十嵐は上にいる。
確証は無いが、六感がそう警鐘を鳴らしてならない。
急いで上にあがらなければ……なにやら嫌な予感がしてならない。
まさか帆奈美の身に、ああくそっ、考えれば考えるほどネガティブになる!
「頼んだ!」
ヨウは仲間達を置いて二階へと続く階段の入り口に向かう。
ヤマトの六感も自分と同じ結論を出したのだろう。彼も階段の入り口に駆けていた。
すると二階から団体様の影がチラホラ。
非常事態に備え二階にも戦力を隠し置いていたのだろう。
揃って舌を鳴らすヨウとヤマトだったが、間髪容れず二人の間に割って入り団体に突進する不良が視界に飛び込み、思わず驚愕。
道を作ろうとしているのはワタルだった。
自分達の後を追い、逸早く事態に気付いたのだろう。
「俺サマターイム!」
主役になれるチャンスだと冗談をかまし、持参していた角材を大きく振り回し、相手の喉や鳩尾、股間を突きまくっている。えぐい攻撃極まりない。
「ヨウ、ヤマト。隙を見て階段を突破しろ! 俺サマが道を作ってやっから!」
つまりはごり押しで階段を突き進めらしい。
だがしかし、一人で団体を相手取るには幾らワタルであろうと無理がある。
階段から下りてくる人数を見ても、一人では随分と悪戦苦闘しそうだ。



