「だいたい来るの遅ぇんだよ! 手間取り過ぎだ!」
「あ゛? それを言うなら貴様等だって同じだろうが! 合図が遅ぇんだよ! 忘れていたんじゃねえだろうな!」
うぐっ……ヨウは一瞬間を置く。
完全に忘れていたわけではないが、一時的に忘れていたことは事実である。
その証拠に何処からともなく斬り込み隊のキツイ視線がグサリグサリ。
しかし視線もなんのその。
「……お、俺が忘れる筈ねぇだろ」
馬鹿じゃないかと悪口(あっこう)ついた。盛大についていみた。が、直球な性格は嘘をつけないらしい。
誰が見てもヨウの反論には違和感があった。
よってヤマトのこめかみに青筋が立ったのは言うまでもない。
「はぁああ?! 貴様っ、馬鹿とは思っていたが、まさか本当に忘れていたとはッ! 救いようの無い馬鹿だ!」
だからあんなに合図が遅かったのかと、ヤマトが詰め寄る。
ヨウは目を泳がせ、やや控えめに言葉を返す。
「ちょ、ちょっとの間だけだって。ちゃんと最初の方は覚えていたし……大事なのは過程より結果だろ。合図はちゃーんと届いただろうが。結果オーライだ。オーライ」
仕舞いには過程より結果だろうが、俺は悪くない、仕事を全うしたとヨウは開き直る始末。
これによってヤマトはフルフルと握り拳を作って相手にガンを飛ばす。
「ンの、能天気野郎がっ! だから貴様はいつも俺を苛立たせるんだっ! 計画を狂わせやがる!」
「べーつに計画を狂わせたわけじゃねえし? 腹立つのは単にカルシウム不足なんじゃねえの? あーあ、短気損気短気、超短気。
結果オーライだからいいじゃねーかよ。ヤダヤダ、短気損気短気な指揮官さまは」
肩を竦める赤メッシュ不良に、
「貴様はいっぺん死んで来い。馬鹿は死なんと治らない、あ、死んでも治らないかもな」
青メッシュ不良は盛大に皮肉を口にする。
「ンだと? やンのかヤマト」
ヨウは極上の笑みを浮かべ、
「ンだよ。やってやってもいいが荒川」
ヤマトは極悪の冷笑を顔に張り付かせる。
二人の間には青い火花。
喧嘩の火花を散らせる両リーダーに、傍で見ていた副リーダーのシズとススムは勘弁しろよと溜息。
なんでこのタイミングで喧嘩するのだ。
現状を見てから喧嘩をしてくれ。溜息をつかずにはられない。
「単細胞の能無し。覚悟いいな?」
「ッハ、俺をブッコロしゅんするのかよ?」
バチッ、火花を散らす両リーダーを見た敵側さぞ思ったことだろう。チャンスだと。
その証拠に二人に奇襲を仕掛けようとするが、睨みあっていた眼は瞬時に敵へ向けられ、拳を振るう。
「ま、決着は後日だ後日。此処で喧嘩を勃発させるほど落ちちゃねぇしな」
パンパンッと手を叩くヨウは、振り下ろされる鉄パイプを見上げた。受け止めるまでもない。
「ッハ、周りは俺等を舐め腐ってやがるようだがな。チャンスってばかりのツラしやがって。何がチャンスか俺に教えて欲しいくらいだ」
ヨウに向かって振り下ろされる鉄パイプを蹴り上げ、皮肉を含めた笑みを浮かべるヤマトは構えていた右の拳を相手に飛ばす。
まったく仲が良いんだか悪いんだか、リーダーの様子にシズは苦笑を零しつつ、一方でススムの背後に迫っていた蹴りを自分の利き足で受け流してやる。
向こうの副頭と視線がかち合い、互いに一笑を漏らした。
仲の良し悪しは自分達にも当て嵌まるかもしれない。
次から次に到着する仲間を見やり、一通りの口論も終えたところで、ヤマトは体を動かしながらヨウに尋ねる。五十嵐の行方を。
踵を相手の頭に落とし、キャツは中だとヨウは倉庫に目を眇めた。親玉である五十嵐は不良達を此処に置いて中にいる。
ノウノウと高みの見物をしているのかもしれない。
悪知恵を絞って新たな戦法を組み立てているかもしれない。
一刻も早く中に行きたいのだが、数が数だ。近付けぬ状況にある。
ヨウの説明に、「中だな」ヤマトは不良の腹部に膝蹴りを飛ばして一目散に駆け出した。
「アキラ! ススム!」
援護要請を口にし、彼らしくない無鉄砲な行動を起こし始める。



