こうして四人で須垣先輩がいるであろう学校に向かう。


俺達と同じ制服を身に纏った日賀野と健太、舎兄と俺で学校に向かうはいいんだけど、ここで一つ問題が浮上する。


それは徒歩で行くかどうかの問題。


神社から学校まで徒歩じゃ奇襲を喰らうかもしれない。

俺とヨウはチャリがあるからいいけど、二人はどうするんだろう? バイクか?


鳥居を潜って石段を降りる俺とヨウは素朴な疑問を日賀野達にぶつけた。


すると日賀野がヨウにバイクのキーを投げ渡してくる。


「運転はできるだろう?」


日賀野の問い掛けに、「一応な」自分のバイクを持ってないから、いつもは人の後ろに乗せてもらっているけど、と答えを返す。


おいマジで?

ヨウはバイクの運転ができるのか?


だったら自分のバイク買ってくれねぇかな。

俺のチャリに乗るよりも絶対に交通の便はいいぞ……ん? 待てよ? ヨウがバイクを運転するということは、必然的にヨウはバイクだろう?


俺はチャリで決定だろうから、あいつの運転するバイクの後ろに乗るのは健太か、日賀野? おい嫌な予感がするぞ。


「ケンは荒川のバイクに乗れ。俺はプレインボーイのチャリに乗る。少しばかり速度を計算してぇからな」

「おれは構いませんけど……おい、圭太。固まっているぞ。大丈夫か?」


「いや、こりゃ大丈夫じゃねえな。ケイ、生きてっか? お兄ちゃんが分かるか?」


石化してしまう。

やっぱりあいつが乗ってくるんじゃねえかよ!

嘘だろまじかよ冗談だろ!


は、ははっ、じょ、上等じゃん!

ぶっつけ本番よりはなぁ、こういった予行練習が大切なんだぜ!

俺、日賀野兄貴を後ろに乗せて運転できるなんて超幸せだぜ! 幸せ過ぎて泣けてきた!


大丈夫かという健太の問い掛けに、「あったぼうよ!」俺はヤケクソでテンションを上げた。


「日賀野兄貴を乗せて頑張っちゃうんだぜ! ははっ、頑張るんだぜ! 圭太超頑張るんだぜ!」

「さっすが舎弟だなぁ」

「しゃ……舎弟じゃないですけど、頑張っちゃうんですぜ!」

「んー? さっき舎弟になるって言わなかったか? 男に二言はねぇぞ? プレインボーイは女だったのか?」


にやり、大魔王様に一笑されて俺はドッと冷汗を流す。

せ、折角トラウマを乗り越えて果敢に頑張ろうとテンションを上げているのに、この人は人の努力をことごとくヌァアアアアア?!!


動揺のあまりに石段を踏み外して俺は下まで真っ逆さまに落ちる。


幸いな事に頭をぶつけることはなく、尻餅程度で済んだけど、


「おい大丈夫かよ」

駆け下りたヨウに心配されるわ。


「ヤマトさん。悪ふざけが過ぎますって」

健太は日賀野を軽く注意してるわ。


本人は大声で笑ってるわ。最悪!


こ、こうやって俺を苛めてもなぁ。なあんにも利得は出ないんだぞ! 田山いじめ反対だ。


「アイテテ……ケツが。はぁ……ダッセェ」


溜息をついてガックシとジベタリングする俺に、見かねたヨウがいいことを教えてやると肩に手を置いてきた。

「いいこと?」

首を傾げる俺に、ヨウは得意げに鼻を鳴らして語り部に立つ。

これを聞けば必ずキャツなんざ怖くなくなる、舎兄は口角を持ち上げた。

石段を降りてくる日賀野を指差して、


「ああいうガキ大将面しているけどな」


軽くブルブルと震えている俺に耳打ち。


「(ヤマトはなぁ、なんと犬に泣かされたことがあるんだぞ。あの日賀野大和ともあろうお方が犬っころに泣かされた。あいつ犬が怖いんだ)」


は? 犬? 目を点にする俺に、ヨウはしゃがんでゴニョゴニョ。