【神社裏】
(PM04:24)



「――ンだって? 五十嵐竜也の義弟が須垣誠吾?!」



ヨウの頓狂な声音が神社一杯に広がった。

入念な話し合い、そして両者協定チームの応援を頼んだ俺達は再び一休みをしている真っ最中だった。


けれど、情報収集をしに行っていた仲間内の情報に愕然としてしまう。


情報収集組は人脈の広い魚住、荒川チームからは弥生と利二が担当。

三人で情報を仕入れに外出。そして戻って来た結果、仕入れてきた内容に荒川チーム、特に須垣誠吾を知っている面は舌を巻いた。


「知っているのか?」


日賀野が近くにいた俺に声を掛けてくる。


嘆息をつき、


「うちの生徒会長です」


簡潔に説明をした。


須垣誠吾。

過去に一度だけ接触した食えない生徒会長。


厭味ったらしい面とあの笑み、そして腹の内に隠す黒いものは日賀野と類似している。


学校の規律を守るよう生徒達を見守りつつ、不良の俺達には敵意を見せていた。

俺達はてっきり日賀野達と繋がりを持っているんじゃないかと推測を立てていたのだけれど、あの当時の推理は思い切り外れてしまったようだ。


まさか五十嵐と繋がりを持っていたなんて、見るからに態度で不良嫌いですよオーラを放っていたのに、五十嵐と義兄弟だったなんて。


曰く、二人は異父兄弟らしい。

家庭事情により、苗字は違うけど半分だけ血の繋がった兄弟とかなんとか。これは困ったことになってしまった。


「生徒会長は策士なんです。頭はよく回りますし、何より」


俺は舎兄を流し目にする。

最悪だと喚いているヨウが頭を抱えていた。


「ヨウの天敵ですかね」


苦笑を零すと、


「単細胞との相性は最悪だろうな」


日賀野が納得したようにうなずく。


あいつはすこぶる須垣先輩を嫌っていたもんな。


口が裂けても本人の前では言えないけれど、何処となく食えない面が日賀野に似ているから。

できることなら今は相手にしたくない先輩だけど、貴重な情報源には違いない。  


だって須垣先輩がキャツと義兄弟なら、義兄の行動をある程度知っているかもしれないのだから。


「しゃーねぇ。行くか」


開き直ったようにヨウは立ち上がり、自分が直接キャツのところに行ってシメ上げた後に、情報を仕入れてくると申し出る。


まだ学校はあっている時間帯。

学校が終わったとしても、標的は生徒会にいる筈だ。


相手は生徒会長だしな。

帰宅直行は考え難いだろう。生徒会って結構忙しいみたいだし。


「だったら俺も行く」


日賀野も重い腰を上げた。

相手が頭脳派だと知り、ヨウ相手じゃ詰問しても唆されると思ったらしい。自分も行くと言い張った。


「お前は他校生だろうが」


ここでヨウが日賀野の同行に異議申し立てをする。

制服でばれる、教師に見つかったら騒ぎになると指摘。面倒事はご免だと言うのが舎兄の意見だ。


確かにご尤も。 

けれど日賀野はそれがどうしたとばかりに、口角をつり上げた。


「無いなら手に入れればいいんだろ?」


言うや否や、日賀野はワタルさんに制服を貸せと命令。

制服を交換して学校に侵入する魂胆らしい。


さすがは日賀野大和、悪知恵は天下一品だ!


でもヨウと日賀野だけじゃ喧嘩するだろ?

誰かストッパーがいないと。


須垣誠吾と同じ学校に通っている奴は後、弥生とハジメ……いやハジメは今、私服だから制服は貸せない。

ワタルさんは日賀野に制服を貸した。

残りは利二と俺……うん、二人で大丈夫だろう! 俺は何も想像しなかった、しなかったぞ!


「おい、そこのプレインボーイ。ケンに制服を貸せ。ケンも連れて行く」

「え、あ……はあ。別に構いませんが」


利二も些か日賀野にトラウマを持っているらしく(だよなぁ!)、声を掛けられて引き攣り笑いを浮かべていた。


ちょ、愛しの利二くんが健太に制服を貸しちまうってことはだよ?

残りは弥生と俺しかないないってことで……いや、三人で大丈夫、大丈夫だろ!


「これで四人。人数的には丁度いいだろう」


俺の心中の叫びは虚しくも散った。


日賀野は容赦なく俺を人数に入れ、ついて来いと命令してくる。


やっぱり来ると思った。思っていたよ。


どーせ逃げられない運命だと思っていたよ。

ははっ、べっつに泣かないんだぜ! 健太も一緒だしヨウも一緒だ! 全然ヨユー! 余裕のよっちゃんなんだぜ!